秋雨前線による長雨で劣化が進む屋上防水層の注意点
9月から10月にかけて、日本列島は秋雨前線の影響を受けやすくなります。梅雨のように連日の雨が続き、台風も重なる時期です。アパートやマンションを所有する大家さんにとって、この長雨は単なる気象現象にとどまらず、屋上防水層の劣化を早め、雨漏りリスクを高める要因となります。
長雨が屋上防水に与える影響
屋上防水層は、アスファルト防水・ウレタン防水・シート防水などの工法で仕上げられています。これらは紫外線や風雨にさらされ続け、年数とともに劣化していきます。特に秋雨前線による長期間の雨水滞留は、以下のようなダメージを与えます。
◆防水層の膨れ・浮き
雨水が防水層の下に入り込むと、湿気や水蒸気によって膨れが発生。防水性能が低下します。
◆ひび割れや破断の進行
連日の降雨で防水材が膨張・収縮を繰り返し、細かなひび割れが広がります。
◆排水不良による浸水リスク
落ち葉やゴミで排水口が詰まると、水が屋上に溜まり続け、防水層に大きな負荷をかけます。
◆目に見えない内部劣化
雨水がコンクリートの隙間から浸透し、防水層下の断熱材や下地が劣化。症状が出た時にはすでに大掛かりな修繕が必要になる場合があります。
2.秋に実施すべき点検ポイント
秋雨前線の時期を迎える前後には、以下の点検を行うことで防水層の寿命を延ばすことが可能です。
◆屋上全体の目視点検
膨れ・ひび割れ・シートのめくれ・塗膜のはがれを確認。特にドレン(排水口)周辺は重点チェック。
◆排水口・縦樋の清掃
落ち葉や泥が堆積していないかを確認し、詰まりを解消。これだけで雨水滞留の大半は防げます。
◆シーリング材の確認
立ち上がり部分や配管の取り合い部など、雨水が侵入しやすい場所のシーリング材が硬化・剥離していないかを点検。
◆過去の補修部分の劣化確認
パッチ補修やコーキング補修を行った箇所は劣化が早いため、重点的に確認。
3.劣化を発見した際の対応方法
◆軽微な補修
小さなひび割れや局所的な浮きであれば、シーリング材の打ち替えや部分補修で対応可能です。
◆中程度の劣化
防水層の広範囲に膨れや劣化がある場合は、部分的に防水材を塗布する「ウレタン塗膜防水の重ね塗り」などが検討されます。
◆重度の劣化
防水層が全体的に寿命を迎えている場合は、全面改修(既存防水層撤去+新規施工)が必要になります。費用は数百万円規模になるため、早期発見・早期対応が何よりもコスト削減につながります。
・9月〜10月に屋上防水層を点検・清掃する
・排水口の落ち葉詰まりを解消する
・軽微な劣化は早めに補修し、重度劣化は業者に相談する
この3つを徹底するだけで、入居者からの雨漏りクレームを防ぎ、建物寿命を延ばすことにつながります。秋は不動産経営における「防水リスク対策の分岐点」といえるでしょう。