アパート・マンションの防水点検、1年の計画

集合住宅の防水は、屋上やバルコニーだけの話ではありません。外壁の目地、サッシ周り、笠木や板金の継ぎ目など、雨水の入口は点在しています。雨漏りが起きてから原因を追うと、室内復旧や入居者対応まで含めて負担が大きくなります。だからこそ防水対策は、平時に兆候を拾い、計画的に手当てをしていくのが望ましいと考えられます。
1. 日常点検の3つのポイント
防水対策の第一歩は、専門工具がなくてもできる日常点検です。ポイントは3つあります。
一つ目は「排水の確保」です。屋上やバルコニーのドレンに落ち葉や泥が溜まると、水が滞留して防水層の負担が急増します。水溜まり跡が残っていないか、排水が素直に流れているかを見ます。
二つ目は「端部と継ぎ目」です。防水層の端、立上り、金物の押さえ部、板金ジョイントは動きが出やすく、切れやめくれが起きやすい部分です。シールのひび割れや隙間は小さく見えても要注意です。
三つ目は「比較できる記録」です。同じ位置・同じ角度で写真を残すだけで、劣化の進行が見える化できます。点検の価値は“当日の良否”より“前年差”にあります。
2. 季節で変わるリスクを把握しておく
日本の集合住宅では、季節ごとにリスクが変わります。梅雨前は、冬の伸縮で傷んだシーリングや端部の割れが表面化します。台風前は、強風で笠木や板金が浮きやすく、飛来物で防水層が傷つく恐れがあります。凍結期は、水が残った箇所で膨張収縮が起こり、脆くなったシールや立上りのクラックが進行しやすくなります。したがって、点検は「毎月の簡易巡回」に加え、「梅雨前」「台風前後」「冬前」の節目点検を組み込むとトラブルが減ります。
3. 小補修を先に打つ
防水工事というと大規模改修の印象が強いですが、実務では小補修の積み重ねが効きます。端部のシール補修、押さえ金物の増締め、ドレン周りの補修、軽微なふくれの処置などを早めに行うことで、防水層全体の寿命を延ばせます。逆に、排水詰まりを放置して長期間水が溜まると、短期間で劣化が進み、結果として高額な改修が前倒しになります。費用対効果が高いのは、常に「排水」と「端部」です。
4. 年次点検は専門業者に
年に一度は専門業者の点検で、屋上だけでなく外壁・開口部も含めて総合的に確認することをおすすめします。雨漏りの原因は複合しやすく、屋上を直しても止まらないケースがあるからです。報告書は「指摘→想定原因→優先度→概算→推奨時期」の形式で整理し、次年度予算に落とし込める状態にしておくと、管理が一気に楽になります。
5. 資産価値の保全と居住者の安心のために
雨漏りは、建物の劣化だけでなく、入居者の不満や退去、クレーム対応の長期化にもつながります。防水対策の要点は、排水を確保し、端部と継ぎ目を先に手当てし、写真記録で進行を管理することです。大きな工事の前にできることは多くあります。小さな兆候を見逃さず、計画的に守っていくことが、集合住宅の資産価値と居住者の安心を支えます。









