アパート、マンションの漏水事前対策として賃貸オーナー様が日々できること

アパート、マンションの漏水事前対策として賃貸オーナー様が日々できること

 賃貸物件の管理において、漏水は大きな問題となります。漏水が発生すると、物件の価値が低下するだけでなく、入居者にとっても生活環境が悪化します。さらに、漏水による修理費用や賠償責任が発生する可能性もあるため、賃貸オーナー様は日々の管理において漏水対策を事前に講じることをお勧めします。

1. 定期的な点検

①配管のチェック
 建物内外の配管を確認し、目視でひび割れや腐食の兆候を探します。特に古い配管は劣化しやすいため、注意が必要です。

②水漏れの確認
 蛇口やシャワーの周辺を定期的にチェックし、漏れがないか確認します。目立たない場所でも水滴が見られる場合は要注意。

2. 入居者とのコミュニケーション

①報告システムの構築
 入居者が問題を簡単に報告できるような仕組み(例えば、専用の電話番号やアプリ)を用意します。

②定期的な連絡
 定期的に電話やメールで入居者に連絡し、居住空間の状態や問題点をヒアリングします。問題を早期に発見できる可能性が高まります。

3. 排水溝の清掃

① 清掃スケジュールの設定
 共用部分の排水溝やドレンの清掃を定期的に行うスケジュールを作成し、実行します。特に梅雨時期や秋の落ち葉の時期の実施は有効です。

②詰まりの予防
 排水口にフィルターを設置し、髪の毛やゴミが詰まらないように工夫します。

4. 給水設備の維持管理

①定期的なメンテナンス
 給水タンクやポンプの状態を定期的に点検し、必要に応じて部品を交換します。

②水質検査
 水質のチェックを行い、不純物や異常がないか確認します。特に配管が古い場合は注意が有効です。

5. エアコンの点検

①ドレンホースのチェック
 エアコンのドレンホースが詰まっていないか確認し、定期的に清掃します。詰まりがあると水が漏れ出す原因になります。

②フィルターの掃除
 エアコンのフィルターを定期的に掃除し、効率を保つとともにドレンホースのつまりを防ぎます。

6. 水道の使用状況の確認

①水道メーターの確認
 定期的に水道メーターをチェックし、日常と異なる使用量ではないか確認する。不自然な増加が見られた場合は漏水に起因する場合があります。

②水道料金履歴の分析
 過去の水道料金と比較し、日常と異なる変動がないか分析します。特に長期間の変化に注意を払います。

7. 専門業者との連携

①定期点検の契約
 水道業者や専門のメンテナンス会社と定期点検契約を結ぶことで、定期的にプロに状態を確認してもらいます。

②トラブル対応のフロー
 万が一のトラブル時に迅速に対応できるよう、業者の連絡先を常に更新しておきます。

8. 漏水検知システムの導入

①自動検知システムの設置
 漏水を自動的に検知するシステムを導入することで、早期発見が可能になります。設置場所は水道管の近くや、エアコンのドレン周辺が適しています。

②アラート機能の活用
 漏水が発生した際に通知を受け取ることができるシステムを選ぶことで、迅速な対応が可能になります。

 これらの具体的な対策を日常的に実施することで、漏水のリスクを大幅に減少させ、賃貸物件の価値を維持し、入居者に安心して住んでもらうことができます。

一般社団法人日本防水協会・一般社団法人日本給排水設備協会 2024年度合同会員大会 開催報告

1.開催概要

<日時>
2024年9月12日(木)午前11時~13時(昼食時間含む)

<場所>
株式会社パワーコンサルティングネットワークス本社 会議室

<式次第>
①日本防水協会 ご挨拶-日本防水協会 代表理事 黒田真隆
②日本防水協会 活動報告-日本防水協会 理事 谷崎憲一
③日本給排水設備協会 ご挨拶-日本給排水設備協会 代表理事 泉谷淳
④日本給排水設備協会 活動報告-日本防水協会 事務局長 谷崎憲一
⑤活動計画(二団体)-日本防水協会 理事 谷崎憲一
⑥日本防水協会 体制報告-日本防水協会 代表理事 黒田真隆
⑦日本給排水設備協会 体制報告-日本給排水設備協会 代表理事 泉谷淳
⑧懇親昼食会

2.開催風景ピックアップ

①日本防水協会 ご挨拶-日本防水協会 代表理事 黒田真隆

ご挨拶と共に、事業目的並びに事業内容の確認を行いました。

②日本防水協会 活動報告-日本防水協会 理事 谷崎憲一

活動報告として、主に次の2回のイベントについて取り上げました。

◆2024年8月6日開催
「漏水問題の法律知識から 最新漏水調査まで一挙ご紹介」セミナー&相談会

◆2024年8月28日開催
「銀座アポロ昭和館」見学会

また、日本防水協会の集客・団体周知活動について、以下の点もご説明いたしました。

・WEB広告
・専門誌『住宅新報』への広告掲載
・メールマガジン配信
・ホームページにおける情報定期更新
・土地活用プランナー登録者への告知
・各種小冊子などの制作、配布

 加えて、上記コンテンツなどに対する「お客様の声」もご紹介いたしました。

③日本給排水設備協会 ご挨拶-日本給排水設備協会 代表理事 泉谷淳

ご挨拶と共に、事業目的並びに事業内容の確認を行いました。

④日本給排水設備協会 活動報告-日本防水協会 事務局長 谷崎憲一

活動報告として、主に次の内容ついて取り上げました。

◆ホームページにおける記事掲載

◆ホームページにおける集客や会員紹介について

⑤活動計画(二団体)-日本防水協会 理事 谷崎憲一

今後の活動計画として、以下のご説明をしました。

・セミナー、相談会の開催予定
・内容を厳選してのフェア出展
・HPのブラッシュアップについて
 →コラムの定期掲載
 →事例の紹介 など
・メールマガジンの活用
・プレスリリースの活用

⑥日本防水協会 新体制報告-日本防水協会 代表理事 黒田真隆
⑦日本給排水設備協会 新体制報告-日本給排水設備協会 代表理事 泉谷淳

上記2団体の体制について、ご報告を行いました。

以上

漏水と雨漏りとの違い、原因、対処法

漏水と雨漏りとの違い、原因、対処法

 建物の健康を守るためには、漏水と雨漏りの違いを理解し、適切な対処を行うことが不可欠です。両者には異なる原因があり、対応方法も異なりますが、いずれも放置すると建物に深刻なダメージを与える可能性があります。ここでは、漏水と雨漏りの違いや主な原因、そして迅速に対処するための方法について解説します。

1.漏水(ろうすい)

 建物内の配管や給排水設備機器の不具合が原因で発生します。

原因①:配管の劣化
 屋根材は風雨や紫外線の影響で徐々に劣化します。瓦やスレート、金属製の屋根材などがひび割れたり、ずれたりすると、その隙間から雨水が侵入します。また、屋根材が飛んでしまったり、欠けてしまった場合も雨漏りの原因となります。

原因②:接続部の不具合
 配管同士の接続部分には、シール材やパッキンが使用されていることもあり、これらが経年劣化や不適切な取り付けにより効果を失うと、接続部分から漏水が起こります。また、地震や建物の動きによって配管がずれたり、緩んだりすることでも漏水は発生します。

原因③:設備の故障
 トイレや洗面台、給湯器などの設備機器の不具合での漏水が起こります。例えば、トイレのタンク内でパッキンが劣化して水が流れ続けることによる、漏水、給湯器の配管や接続部分の不具合により発生する漏水などです。

対処①:漏水箇所の特定
 水道メーターを確認し、すべての蛇口を閉めた状態でもメーターが動いている場合、どこかで漏水が発生している可能性が高いです。水が漏れている箇所を視覚的に確認し、特定します。

対処②:専門業者への連絡
 漏水箇所が特定できたら、専門の配管工事業者に連絡して修理を依頼します。早急に修理を行わないと、建物の構造や内装に被害が広がる可能性があります。

対処③:応急処置
 修理が行われるまでの間、漏水を一時的に止めるために、水道の元栓を締めることが有効です。また、漏れた水を拭き取ることで、さらなる被害の広がりを防ぐことができます。

2.雨漏り

 外部からの雨水が建物に侵入することで起こります。

原因①:屋根材の劣化
 屋根材は風雨や紫外線の影響で徐々に劣化します。瓦やスレート、金属製の屋根材などがひび割れたり、ずれたりすると、その隙間から雨水が侵入します。また、屋根材が飛んでしまったり、欠けてしまった場合も雨漏りの原因となります。

原因②:防水シートの破損
 屋根の下には防水シートが敷かれており、雨水が屋内に浸入するのを防いでいます。しかし、このシートが破損したり劣化すると、雨水が屋根材を通過して建物内部に侵入します。シートの寿命が尽きている場合や、施工時に適切に敷かれていなかった場合も同様に雨水が浸水します。

原因③:外壁のひび割れ
 外壁に発生したひび割れや隙間から、雨水が侵入することがあります。特に、コンクリートやモルタルの外壁は、経年劣化によりひびが入りやすくなります。また、外壁の防水処理が不十分な場合も、雨水の浸入が起こります。

原因④:窓やサッシの不具合
 窓枠やサッシの隙間からも雨水が入り込むことがあります。特に、古い建物では窓のゴムパッキンが劣化している場合があり、それが原因で雨水が室内に漏れ出します。また、窓の取り付けが不十分な場合にも雨漏りが発生します。

対処①:原因箇所の確認
 雨漏りが発生している場所を調べ、屋根や外壁、窓周りの状態を確認します。内部からの調査だけでなく、外部からも確認することが重要です。

対処②:応急処置
 雨漏りが進行するのを防ぐために、ビニールシートを使用して一時的に雨水の侵入を防ぎます。内部の水が漏れている箇所に受け皿となるバケツ等を置き被害の広がりを防ぎます。

対処③:専門業者への依頼
 雨漏りの原因となっている箇所を修理するために、専門の屋根工事業者や外壁工事業者に依頼します。屋根材や防水シートの交換、外壁の補修などが必要な場合があります。

 漏水と雨漏りのいずれの場合も、早急な対応が建物を守るために重要です。両者の違い、原因と対処法を正しく理解し、適切な対応を取ることで、被害の拡大を防ぐことができます。

アパート・マンションで発生する雨漏りの原因と対策

アパート・マンションで発生する雨漏りの原因と対策

アパートやマンションの雨漏りは、さまざまな原因によって発生します。以下に主な原因とその対策をまとめます。

1.屋根の劣化

◆原因
屋根材(瓦、スレート、金属など)は紫外線や風雨によるダメージを受け、経年劣化します。瓦のずれや割れ、スレートのひび割れ、金属屋根の破損などが雨漏りの原因となります。

◆対策
・定期的な点検:屋根の状態を定期的にチェックし、劣化や破損が発見された場合は速やかに対応します。
・屋根材の修理や交換:ひび割れや剥がれが見つかった場合は、部分的な修理または屋根材の交換を行います。

2.外壁の劣化

◆原因
地震や建物の揺れ、風雨の影響で外壁にひび割れが生じます。ひび割れから水が侵入し、内部にまで影響を及ぼすことがあります。

◆対策
・ひび割れ部分の補修:ひび割れが発生した箇所を専用の補修材で埋める。
・シーリング材の打ち直し:外壁の継ぎ目や窓周りのシーリング材を定期的にチェックし、劣化している場合は打ち直します。

3.窓やドアのシーリング劣化

◆原因
シーリング材は経年劣化や施工不良により、防水性能が低下します。特に窓やドア周りは雨水の浸入が起こりやすい箇所です。

◆対策
・シーリング材の再施工:劣化したシーリング材を剥がし、新しいシーリング材を打ち直します。
・窓やドアの調整:隙間ができている場合は、窓やドアの調整を行い、密閉性を高めます。

4.ベランダやバルコニーの排水不良

◆原因
ベランダやバルコニーの排水口が詰まると、水が溜まり、漏水の原因となります。また、防水層の劣化も原因の一つです。

◆対策
・排水口の清掃:定期的に排水口を清掃し、詰まりを防ぎます。
・防水層の補修や再施工:防水層が劣化している場合は、補修や再施工を行います。

5.屋上防水の劣化

◆原因
屋上の防水シートが劣化し破断すると、雨水が侵入します。特にフラットな屋上で勾配不良等がみられる場合は、水はけが悪く、劣化が発生しやすいです。

◆対策
・防水シートの補修や交換:劣化や破断が見つかった場合は、部分的な補修またはシート全体の交換を行います。
・定期的な防水工事:定期的に防水工事を行い、屋上の防水性能を維持します。

6.配管の劣化や破損

◆原因
給水管、給湯管、排水管が経年劣化や外部からの衝撃で破損し、漏水が発生します。

◆対策
・配管の点検と修理:定期的に配管を点検し、劣化や破損が見つかった場合は修理または交換します。

雨漏りの原因ごとの対策を実施することで、雨漏りリスクを減らすことができます。定期的な点検とメンテナンス、そして早期対応が雨漏り防止の鍵となります。

賃借人が水漏れ修理への協力を拒んだ際に、契約解除が認められるためのポイントについて

賃借人が水漏れ修理への協力を拒んだ際に、契約解除が認められるためのポイントについて

はじめに

 建物において、漏水は誰にでも起こりうる問題の一つです。しかし、漏水の生じている場所によっては、調査や工事のために賃借人の部屋に立ち入らなければならず、賃借人の協力が必要な場合があります。
 協力が得られず、調査や工事が遅れることで、被害は拡大してしまいます。そのため、協力が得られなかったことを理由に、賃借人に対して賃貸借契約の解除を求めることができれば、建物の明渡請求に進む選択肢を検討することも可能となります。
 今回は、賃借人の不協力を理由に①債務不履行及び②賃貸借関係の継続を著しく困難にするような行為(信頼関係の破壊)を認め、賃貸借契約の解除を認めた裁判例を紹介します。

【事案】

 本裁判例の被告となった賃借人が住む居室の階下にある部屋に生じた漏水について、賃借人居室側からの調査が必要であるにもかかわらず賃借人が協力しないという債務の不履行を理由に、賃貸借契約の解除等を求めた事案。(東京地判平成26年10月20日)

【解説】

ポイント①
⑴ 漏水調査に協力しないことが債務不履行にあたるか
 原則として、賃貸人は賃借人の許可なしに物件に立ち入ることはできません。
 一方で、民法606条2項によって、賃借人は、賃貸人が行おうとする賃貸建物の保存行為に対する受忍義務を負っていると解されます。したがって、建物保存のための調査や工事を当該賃借人の賃借部分で実施する必要があるときは、賃借人は、正当な理由なくして自己の賃借部分への立入り等を拒むことができず、このような場合に立ち入りを拒否することは賃貸借契約上の債務不履行を構成しうることとなります。

⑵ 裁判所の判断
 本件において裁判所は、業者による調査の結果賃借人居室側からの調査が必要と判断し、漏水が建物の維持・保全上看過できない事象であることは経験則上明らかであるから、その原因究明のための調査とそれを踏まえた修繕工事は、建物の保存に必要な行為と認定しました。そして、本件漏水に関して賃借人居室の立入調査が実施できていないのは、賃借人が正当な理由なくこれを拒絶しているためであり、このことは本件賃貸借契約上の債務不履行を構成する、と判断しました。

ポイント②
⑴ 賃貸借関係の継続を著しく困難にするような行為とまでいえるか
 原則として、債務の不履行(ポイント①)があった場合には契約の解除ができることとされています(民法541条本文)。しかし、一度で終わる売買などと異なり、賃貸借契約は当事者同士の信頼関係を基礎として継続的にされるものであるため、ささいな債務不履行があっても解除はできないとされています。
賃貸借契約においては、賃貸借契約の継続中に、当事者の一方に、その信頼関係を裏切って賃貸借関係の継続を著しく困難にするような行為があった場合には、相手方は、賃貸借を将来に向かって解除することができるものと解しなければならない(最判昭和27年4月25日に同旨)とされています。すなわち、賃貸借関係の継続を著しく困難にするような行為(ポイント②)があると認められるかによって、解除できるか否かが決まることとなります。

⑵ 裁判所の判断
 賃借人の対応は、何ら合理的な理由のない独善的な不信感からされた本件漏水についての調査拒絶という不合理なものである一方、賃貸人らの対応は、賃借人から指摘された調査の結果や、本件漏水の具体的状況を賃借人に伝えるとともに、訴訟提起の可能性も警告し、漏水の発生していた205号室の賃借人からも漏水対策の実施を強く求められていることを伝え、事態の切迫性を訴えており、賃貸人としてなすべき努力を十分に尽くしていたと評価できるとし、賃借人が、本件漏水とは全く関係のない本件居室の設備等の修繕の完全実施を漏水調査への協力の条件とするかのような返答をした段階において、賃貸人らと賃借人との信頼関係は破綻されるに至ったというべきである、として、賃貸借関係の継続を著しく困難にするような行為があったと判断しました。

終わりに

 賃貸借契約の解除を認めることは、賃借人が住む家を失うことでもあるため、裁判所は解除については慎重な判断をしており、信頼関係の破壊は認められ難いのが現状です。
 本裁判例において裁判所は、㋐賃貸人は客観的な証拠・状況を真摯に伝え、立ち入り調査の必要性を十分に伝えるなど合理的な対応をしているのに、㋑賃借人の対応は合理的ではない、などとして信頼関係の破壊を認めました。
 逆に㋐´賃貸人が合理的な対応をせず㋑´賃借人が合理的な対応をしている場合、例えば、㋐´賃貸人が客観的な証拠や必要性を示さずに調査のため立ち入りたいと伝えたところ、㋑´従前から漏水以外もトラブルが生じており、その交渉について賃貸人が合理的な対応をしていないことや、新型コロナウイルスに関する緊急事態宣言がでているなど調査を断ることが不合理とは言えない事情があること、を理由に断られたような場合には信頼関係の破壊まで認められるとはいえない、という判断がされうると言えます。
 具体的な事例において信頼関係破壊が認められるかについては、裁判においては裁判所が判断することになるところ、裁判例というものは裁判所の判断を予想する手がかりとして重要なものとなります。本裁判例において、単に漏水調査に応じない、というだけではなく、そこに至るまでの経緯、賃貸人の対応、賃借人の対応、などを総合的に考慮して信頼関係の破壊が認定されたことから、類似の事例においても信頼関係破壊が認められる可能性があることを示した点で、本裁判例は参考になると考えられます。

以上

九帆堂法律事務所
宮野真帆