防水工事の種類と流れ① <ウレタン防水工事>

1. 手抜き工事をされないためにも、知っておきましょう
高額な防水工事。しかし、いわゆる「手抜き工事」も決して少なくありません。というのも、多くのオーナー様は防水工事に対する知識がないために、手抜きをされても気づくことがないためです。手抜き工事を未然に防ぐためにはしっかりとした事業者を選ぶことが最大のポイントになりますが、そのためにも、オーナー様自身が防水工事の基本的な知識を持っておくことが有効です。なぜならば、業者選びの際にいろいろな質問ができたり、工事中にもちょっとした確認ができるからです。
<手抜き工事例>

①塗る回数のごまかし
②乾燥時間の短縮
③防水シートの繫ぎ目の接着がしっかりとしていない

今回は、ウレタン防水工事について、解説します。
2. ウレタン防水工事の種類と流れ
ベランダや屋上の床に液体状のウレタン樹脂を床面に厚めに塗り拡げて乾燥させ防水膜をつくる工法の一種です。様々な下地に施工可能な上、安価なウレタン防水工事には以下の3種類の工法があります。ただし、最も手抜き工事がされてしまう可能性が高いと考えられます。

①密着工法
→床面に直接ウレタン樹脂を塗るシンプルな工法。

②メッシュ工法
→床面にメッシュシートを貼り付けてウレタン樹脂を塗る工法。密着工法よりもヒビ割れしにくい。

③通気緩衝工法
→床面に直接ウレタン樹脂を塗らず、床面に敷いた通気緩衝シートの上から塗り固める。

(1)密着工法の流れ

①高圧洗浄…高圧の水で表面の汚れを取り除きます。
  ▼
②清掃…表面に残ったゴミや不要な防水層などを掃除します。
  ▼
③ひび割れなどの補修…ひび割れクラックを補修すると共に凹凸を平にします。
  ▼
④ドレンの設置…雨水を流すためのドレン(排水溝)を設置します。
  ▼
⑤プライマーの塗布…下地と防水材を密着させるためにプライマー(接着剤)を塗ります。
  ▼
⑥パラペットのウレタン防水…パラペット(屋上やバルコニー等の外周部に設置された低い手すりのような部位)の防水施工を行います。
  ▼
⑦ウレタン塗膜の下塗り…1層目のウレタン塗膜を塗布します。
  ▼
⑧ウレタン塗膜の中塗り…2層目のウレタン塗膜を塗布します。
  ▼
⑨トップコート塗布…ウレタン塗膜の劣化を防ぐための保護塗料を塗布します。
  ▼
⑩密着工法完了…作業は全体を通して3日~5日で完了します。

(2)メッシュ工法

密着工法の①から⑤の流れの後にメッシュシートを貼り、⑧「ウレタン塗布の中塗り」に移行します。

(3)通気緩衝工法の流れ

①高圧洗浄…高圧の水で表面の汚れを取り除きます。
  ▼
②清掃…表面に残ったゴミや不要な防水層などを掃除します。
  ▼
③ひび割れなどの補修…ひび割れクラックを補修すると共に凹凸を平にします。
  ▼
④プライマーの塗布…下地と防水材を密着させるためにプライマー(接着剤)を塗ります。
  ▼
⑤通気緩衝シートの貼り付け…下地に含んだ雨水や水分を逃がすためのシートを貼り付けます。  
  ▼
⑥ジョイントテープの貼り付け…シートのジョイント部分にテープを貼ります。
  ▼
⑦ドレンの設置…雨水を流すためのドレン(排水溝)を設置します。
  ▼
⑧脱気筒の設置…下地に含んだ水分を脱気筒から外に排出します。
  ▼
⑨パラペットのウレタン防水…パラペットの防水施工を行います。
  ▼
⑩ウレタン塗膜の下塗り…1層目のウレタン塗膜を塗布します。
  ▼
⑪ウレタン塗膜の中塗り…2層目のウレタン塗膜を塗布します。
  ▼
⑫トップコート塗布…ウレタン塗膜の劣化を防ぐための保護塗料を塗布します。
  ▼
⑬密着工法完了…作業は全体を通して5日~7日で完了します。

防水工事の種類と流れ② <シート防水工事>

1. 防水工事種別による手抜き工事危険度
前回のコラム(防水工事の種類と流れ①)では防水工事における手抜き工事のリスクについて触れましたが、今回は工事種別による手抜き工事危険度を紹介します。マンションやビルオーナー様は、このリスクを知っておくと共に工事の流れを把握し、手抜き工事をしない、優良な事業者選びに役立てていただければと思います。
<防水工事種類別手抜き工事危険度>
防水工事の種類 工事の特徴 手抜き危険度 手抜き工事の
チェックポイント
ウレタン防水 安価で施工する
場所を選ばない
2層目の中塗り工程が行われているか
FRP防水 強靭かつ
施工期間が短い
やや高 2層目の中塗り工程が行われているか
シート防水 費用対効果が高い 普通 シートの繫ぎ目の接着はどうか
アスファルト防水 高い防水性能 バーナーの炙り不足はないか
また、今回はシート防水工事について解説します。
2. シート防水工事の種類と流れ
塩化ビニルシートやゴムシートを下地に貼り付ける工法です。優れた耐久性があり、メンテナンスの頻度はウレタン防水より少なくなります。なお、シート防水には、密着工法、機械固定工法の2つの工法があります。

①密着工法
→接着剤などで塩ビシートを貼り付ける工法。

②機械式固定法
→ディスク板を使って塩ビシートを下地に固定する工法。

(1)密着工法の流れ

①高圧洗浄…高圧の水で表面の汚れを取り除きます。
  ▼
②清掃…表面に残ったゴミや不要な防水層などを掃除します。
  ▼
③ひび割れなどの補修…ひび割れクラックを補修すると共に凹凸を平にします。
  ▼
④ドレンの設置…雨水を流すためのドレン(排水溝)を設置します。
  ▼
⑤プライマーの塗布…下地と防水材を密着させるためにプライマー(接着剤)を塗ります。
  ▼
⑥パラペットのウレタン防水…パラペット(屋上やバルコニー等の外周部に設置された低い手すりのような部位)の防水施工を行います。
  ▼
⑦ウレタン塗膜の下塗り…1層目のウレタン塗膜を塗布します。
  ▼
⑧ウレタン塗膜の中塗り…2層目のウレタン塗膜を塗布します。
  ▼
⑨トップコート塗布…ウレタン塗膜の劣化を防ぐための保護塗料を塗布します。
  ▼
⑩密着工法完了…作業は全体を通して3日~5日で完了します。

(2)機械式固定法の流れ

①下地処理&強度確認…凹凸を平にして下地の強度を確認します。
  ▼
②絶縁シートを敷く…しわのないようにシートを敷き詰めます。
  ▼
③固定金具の取り付け…固定金具を取り付けます。
  ▼
④ドレンの設置…雨水を流すためのドレン(排水溝)を設置します。
  ▼
⑤シートの貼り付け…固定金具に熱溶着または溶剤溶着します。
  ▼
⑥シートの接合…接合部を熱溶着または溶剤溶着します。
  ▼
⑦接合末端部のシール…シール材を用いてすべての接合部分をシールします。
  ▼
⑧脱気筒の設置…下地に含んだ水分を脱気筒から外に排出します。
  ▼
⑨パラペットにシート貼り付け…パラペットのシート貼り付けを行います。
  ▼
⑩密着工法完了…作業は全体を通して5日~7日で完了します。

裁判例から学ぶ。押さえるべきポイントを紹介! 「施工業者の不始末!責任は誰が負うの?」

はじめに
施工業者の不始末により漏水事故が発生した場合に、建物の賃貸人(所有者)及び賃貸管理業者は、入居者(賃借人)に対して、責任を負うのでしょうか。
今回は、この点が問題になった裁判例を元に、複数の法律構成について検討します。
【事案】
リフォーム工事の施工業者がマンションの排水管を詰まらせたことにより漏水が発生したことから、当該漏水の被害者であるマンション居室の入居者(賃借人)が、当該施工業者、賃貸人(マンションの所有者)及び賃貸管理業者に対して、損害賠償を請求した事案【参考裁判例:東京地判平成24年12月17日(平成23年(ワ)15113号)】
ポイント①
施工業者の不始末により発生した漏水事故について、賃貸人は賃借人に対し賃貸借契約に基づく債務不履行責任を負うのか。
1 法律構成
賃借人が、マンション所有者である賃貸人に対して、漏水事故について責任を追及する場合の法的構成としては、賃貸借契約に基づく使用収益させる義務違反(民法601条)が考えられます。
2 施工業者の行為について
本裁判例では、施工業者は、賃貸人との間の請負契約に基づきリフォーム工事を行っていたのであり、当該請負契約は、賃貸人の賃借人に対する使用収益させる義務の履行を施工業者が補助する関係を理由づけるものではないとして、施工業者の不始末による漏水事故をもって、賃貸人による義務違反(債務不履行責任)の根拠とすることはできないとされました。
3 賃貸管理業者の行為について
本裁判例では、管理会社が漏水事故を認識して連絡することができたことを示す事実は窺えないとして、そもそも、賃貸管理業者は賃借人の主張する損害について責任を負わないと判断されました。そのため、賃貸管理業者の行為(賃借人に対する連絡の懈怠)が、賃貸人の賃借人に対する債務不履行の根拠となるとの主張は、それ自体失当であると判断されました。
ただし、本裁判例においては、賃貸管理業者が賃貸人の履行補助者に当たるか否かの判断が留保されています。したがって,本裁判例と異なり、損害発生に対して賃貸管理業者に責任が認められるような事案であれば、これをもって賃貸人に債務不履行責任が認められる可能性はあります。
ポイント②
施工業者の不始末により発生した漏水事故について、当該居室の所有者は、入居者に対して工作物責任(民法717条1項但書)を負うのか。
1 工作物責任
「土地の工作物」に当たる建物内設備の「設置又は保存に瑕疵」があることによって他人に損害を生じた場合において、当該設備の占有者に過失が認められないときは、当該設備の所有者は、被害者に対して無過失責任を負います(民法717条1項但書)。「瑕疵」とは、土地の工作物が通常備えているべき性状、設備、すなわち安全性を欠いていることを言います。
2 本裁判例における判断
本裁判例では、漏水事故の原因は施工業者の不始末であり、排水菅の管理に「瑕疵」があるとは認められないとして、建物所有者の工作物責任は否定されました。
ポイント③
施工業者の不始末により発生した漏水事故について、施工業者及び賃貸管理業者は責任を負うのか。
1 施工業者
本裁判例では、漏水事故の原因は施工業者がゴミを排水菅に詰まらせたことにあると認定した上で、施工業者は、入居者に対して、不法行為(民法709条)に基づく責任を負うと判断されました。
2 賃貸管理業者
本裁判例では、漏水事故を知った賃貸管理業者は当該事故の発生を入居者に連絡すべき義務があるのにこれを怠り、損害を増大させたとして、入居者から賃貸管理業者に対する不法行為責任が主張されました。しかし、裁判所は、賃貸管理業者が、当該漏水事故を認識し、これを入居者に連絡することができたことを窺わせる事実は存在しないとして、当該不法行為責任を否定しました。
おわりに
本裁判例では、施工業者の不手際により漏水事故が発生した場合において、建物の賃貸人(所有者)及び賃貸管理業者に対する損害賠償請求は認められませんでした。ただし、事案が異なれば、直接的に漏水事故を発生させた者でなくても、その損害について責任を負う可能性があるので注意が必要です。
九帆堂法律事務所
弁護士 原田 宜彦
首都大学東京(現 東京都立大学)法科大学院修了
著作:『実例と経験談から学ぶ資料・証拠の調査と収集-相続編-』(共著)他
講演:(公社)東京共同住宅協会主催 「第11回土地活用プランナー養成講座」(2020年8月)他
以上

大規模修繕工事実施までの流れ・進め方

  1. 建物診断
  2. 見積書の取得会社の選定
  3. 見積書の取得
  4. 施工会社の選定
  5. 工事範囲の検討
  6. 施工会社との契約
  7. 入居者への案内
  8. 工事着工
  9. 工事完了

大規模修繕工事の実施まで少なくとも2~3ヶ月はかかります。

トラブルが発生してからの緊急検討では遅いです。

一般的な大規模修繕工事基本と修繕周期

  • コンクリート躯体
  • 外壁塗装面やタイル面の「ひび割れ」を放置すると、そこから雨水が入り錆汁や欠損につながります。その他躯体には、様々な劣化がありますので、適切に補修する必要があります。
  • タイル補修クリーニング工事
    10〜12年
  • 屋上防水
  • 屋上や屋根の防水材の劣化は雨漏りの原因になります。屋上からの雨漏りは階下の住戸に被害が生じます。漏水する前に対策することが重要です。
  • 屋上防水工事
    10〜12年
  • 鉄部塗装

  • ●屋外鉄骨階段 
    ●鉄製手すり
    ●メーターボックス等
    塗装の劣化により錆が発生し、これが進行すると腐食して鋼材の強度が低下します。鉄部塗装は定期的に塗り替えが必要です。
  • 鉄部塗装工事
    5~6年
  • 外装仕上げ
  • 外壁塗装は紫外線や風雨にさらされることにより劣化します。また、外壁タイルも経年により剥離やひび割れが発生し、剥がれ落ち危険もあります。定期的に、塗装の塗り替え・タイルの補修が必要です。
  • 外壁塗装工事
    10〜12年
  • シーリング工事
    10〜12年
  • 給排水設備
  • ●給排水管
    ●給水ポンプ
    ●受水槽
    管は永久的なものではありません。
    管の材質により腐食や劣化の進行や対応年数も様々です。給排水管の腐食が進むと住戸内や下階住戸への漏水原因となります。
  • 給水ポンプ取替工事
    13年
  • 受水槽取替工事
    20〜25年
  • 建具・金物
  • ●窓サッシ
    ●玄関扉 
    ●集合ポスト等
    毎日使用するので、傷みやすい部分です。
    また、建物全体のイメージに大きく影響します。
  • 集合ポスト取替工事
    20~25年
  • 窓サッシ取替工事
    30~35年
  • 玄関扉取替工事
    25~30年
  • 外構・付属設備
  • ●集会所
    ●駐輪場
    ●外構等
    舗装の沈下や水たまりは日常生活に支障が生じます。また、マンション内の高齢化に向けたバリアフリー化なども必要です。
  • 機械式駐車場取替工事
    20~25年
  • 内舗装やり替工事
    20~25年
  • 機械式駐輪機取替工事
    13年
  • 電気設備

  • 外壁塗装面やタイル面の「ひび割れ」を放置すると、そこから雨水が入り錆汁や欠損につながります。その他躯体には、様々な劣化がありますので、適切に補修する必要があります。
  • エレベーター取替工事
    30年
  • Vアンテナ取替工事
    15年
  • 照明器具取替工事
    15~20年
  • バルコニー・屋外廊下防水
  • バルコニーの床から漏水すると洗濯物が濡れるなど、階下住戸の生活に支障が生じます。適切な防水をする必要があります。
  • ルーフバルコニー防水工事
    10~12年
  • 屋外廊下防水工事
    10~12年
  • バルコニー床防水工事
    10~12年
  • バルコニー天井塗装工事
    10~12年

防水工事でよくあるトラブル紹介

建物を健全な状態に保つために必要な防水工事ですが、予期しないトラブルに巻き込まれてしまうこともあります。
ここでは、防水工事によくあるトラブル事例をご紹介します。
1.工事中の匂いや騒音等のトラブル
防水工事の施工方法や材料等によりますが、「塗装の匂いが思ったよりきつい」、「工事における機械工具からの騒音で眠れない」等、近隣住人からのクレームが発生することがあります。
塗装につきまとう有機溶剤のシンナーは、吸引すると健康被害を引き起こすこともありますので注意しなくてはなりません。
匂いや騒音の発生は、工事上、致し方ない点もあります。しかし、クレームを少しでも和らげるためには、事前に施主と工事業者が近隣住人に挨拶回りと匂いと騒音についての内容を説明しておくことが重要となります。
くれぐれも迷惑をおかけすることについてのお詫びの姿勢を忘れないようにすることが大切です。

2.手抜き工事等のトラブル
ウレタン防水の手抜き工事
ウレタン防水においては、通常は塗膜防水層の厚みを2ミリ以上にするため2~3回程度重ね塗りをしなくてはなりません。しかし、重ね塗りの手間を惜しんだ手抜き工事では、防水層の厚みが足りない為に劣化が早く進行し、塗料が割れて雨漏りすることがあります。

シート防水の手抜き工事①
シート防水においては、シート接合の際にシーリング材を挿入する必要があります。この工程を省いた手抜き工事では、シート接合部や端末部に隙間ができ、雨漏りすることがあります。

シート防水の手抜き工事②
テレビニュースで、高層マンション屋上の防水シートが台風で大きく剥がれて地上に落下した映像をご覧になったことはないでしょうか。このケースでは、防水シートを張る際における清掃等の下地処理を省いた手抜き工事が疑われます。
きちんと下地処理をしないで接着剤を塗布した場合、下地と防水シートが密着せず、シートの伸縮により変形し破れてしまいます。その結果、そこから風が吹き込み、防水シートが剥がれてしまうのです。

3.トラブルを未然に防ぐために
折角、時間と費用をかけて防水工事を施したのに、それが原因で新たな雨漏りやトラブルが発生してしまっては本末転倒です。
下記に、トラブルを未然に防ぐためのチェックポイントを記載しますので、ご参考いただければと思います。

チェックポイント
1)雨漏りの原因を的確につかむこと
2)雨漏り原因を見つけ出し、そのための解決工事を遂行できる防水工事会社を選ぶこと
3)手抜きやミスをやらない誠実な防水工事会社を選ぶこと
4)見積書で工事内容(プロセスと仕上がり点検等)が適切かどうかチェックしておくこと
5)工事完了後、仕上がりが適切かどうか自ら確認すること
6)問題点があれば、修正工事をしっかりお願いすること

雨漏り・漏水の原因調査の方法と特徴

雨漏り・漏水原因の特定は簡単ではありません。なぜなら必ずしも漏れてる出口の上部が原因箇所とは限らないからです。
本ホームページ(「防水について」)でも解説していますが、水は低い方向ばかりでなく横方向、時には上方向にも流れていくことがあるためです。
そこで、原因箇所の特定は、調査員の目視や経験則に加えて科学的な調査を行うのが一般的です。十分な調査がされずに行われた工事では、結局漏水が止まらなかったという例が大変多くみられます。
以下に漏水の原因に対応した効果的な調査方法をご紹介していきます。
1.散水試験
漏水している箇所の上部から一定時間放水し、やはり漏れてくるかどうかを確かめます。いつも通り漏れてくるようであれば、散水した箇所に原因(故障個所)があると特定されます。一方、漏れてこない場合は、順次散水する場所を変えながら、散水箇所が何処なら漏れ、何処なら漏れないかを確認していきます。
この方法は実際の水の侵入口を探る試験ですので確実性が高いと言えますが、調査は晴れた日に限られることや複数箇所に原因がある場合などは見落としの危険性があるというマイナス点もあります。
その場合散水する水に複数色の着色をして、水の入り口と出口をより明確にする方法がとられます。
2.ガスを注入する試験
漏れている箇所から高圧なガスを注入し、外部に漏れるガスをセンサーで感知して原因箇所を探る方法です。また、同種の方法としてガスの代わりに臭いを付けた高圧の空気を注入して感知する方法などがあります。
3.赤外線照射による試験
外壁から雨水が侵入しているような場合は、外壁材と躯体部との間に水の通り道ができていることがあります。雨が降った後や散水試験の後など水が侵入している箇所は低温となり他の正常部分の表面温度と差が生じます。
この現象を利用して赤外線を照射することで外壁の表面温度が低く表示された箇所を重点的に調べて水の侵入箇所を見つけ出します。
この方法は、比較的広範囲を簡便かつ遠隔操作で行うことができるため初動の調査としては有効な方法といえます。
4.昨今の新たな調査方法
目視しにくい屋上や高層階の外壁など、人の目に代わって「ドローン」を飛ばして撮影し状況を確認するという方法を採用している調査会社もあります。従来ならば足場を組んで上ってみないと分からないという場所でも、目視と同じような調査ができるようになっています。
5.オーナー様ご自身でも簡単にできる調査
外壁がタイル張りの場合は、目地部分から雨水が侵入することが多く起こります。
この場合タイルの「浮き」(表面が膨らんだ状態)がみられます。そのような箇所は打診棒で叩いたり、擦ったりすると中が空洞のようなカラカラと軽い乾いたような音がします。